古い植物図鑑の切れ端

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 仕事帰りに寄ったお店に置いてあった本の切れ端です。植物図鑑だそうですが、この2枚きりで、お店の人に聞いても、ドイツや東欧に仕入れに行っているということ以外、時代も何もわからず。写真右側はデージーだと思ったので検索したところ、絵の下に書いてある文字の後半の部分、Bellis perennisというのがデージーの学名のようでした。

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 2枚とも両面に絵があり、写真の右側、デージーの裏に描かれた絵のCorydalisはキケマン属の学名で、そういえば同じ仲間のムラサキケマンに似ています。残りの2つも、どこかで見たような植物ですね。

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 ラテン語の学名の前、ハイフォンで繋いであるのは何語でしょう。「c」の上に変な記号があります。ヨーロッパの特殊文字を検索してみましたら、ハーチェク(キャロン)と言って、チェコ語やスロバキア語に使うとありましたよ。うわ~!このお店チェコの古い雑貨をよく扱っているんです。

 時代はいつなのか、レトロな雰囲気だけではわかりませんね。しかし日本でも戦前、こんな繊細なイラストが描かれた図鑑があったように思いますから、なんとなく20世紀前半かしら・・・と、あまり自信はありませんが思っています。デージーの葉の部分を拡大してみました。とても丁寧に描かれているでしょう。

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 この2枚の切れ端、しばらく前からお店にありました。ときどき寄っては手に取っていましたが、陶磁器関係でも、絵葉書でも、「大東亜戦争」関係でもない。後でどうするという目的もない。たぶん調べても何もわからないだろうし、また妙なモノを増やしてもと思っていたのですが、寄るたびに手に取ってしまい、あるかなと気にするようになったので買いました。

 元はどんな姿をしていたのでしょう。綴じてあった部分のぎざぎざが妄想をかきたてます。ページによっては複数の植物を描いていたかもしれませんし、説明の文字で埋まったページもあったかも。丁寧な絵ですから、安い冊子のようなものではなく、ずっしりと手に重さを感じるような植物図鑑の本だったのではないかしら。表紙は無地の茶系で、細い金色の文字が入っています。(これは何の根拠もありません、妄想です)

 チェコかスロバキアの貧しい学生が、なけなしのお金で手に入れた図鑑。所有していれば愛着がわくに違いない美しい本を何度も何度も読み返し大切にした。彼は家庭を持ち、激動のチェコスロバキアの歴史の中、生活のため本など顧みる暇もない時代もあったけれども、この本だけは手放さなず、ときどき眺めた。見ていると疲れがとれるからだった。子ども達が小さな時は、散歩で見つけた花を子どもと一緒に調べてみたこともあった。彼が亡くなった時、表紙は擦り切れ、バラバラになりかけたこの本は彼の墓に一緒に入れられたが、2枚のページが本から外れて後に残っていた。(もちろんすべて妄想です)

 或は、プラハのある古い家の屋根裏に、本棚で隠された部屋があって、そこにこの本は残されていた。散乱した床の上で踏まれてちぎれてしまったページ。持ち主は、この薄暗い小部屋で息をひそめながら、自由に歩くこともできない美しいチェコの野原を想い、この本を眺めていた・・・やめよう、これは。ちぎれた古い本のページはどうやら悲しい連想もしてしまうらしい。

 この本の持ち主は女性だったかもしれない。そこそこ豊かな農家に生まれた少女は、庭や野原の草花に囲まれて育ち、この図鑑の絵のように瑞々しい感性を持っていた。田舎で本屋もなかったけれど、近くの小さな町で雑誌を買ってきてもらうのを楽しみにしていたものだった。やがて成長した彼女は恋人からこの本を贈られ大切にしていた。しかし恋人はあの戦争で・・・だめだったら、もう。

 さて、そういうわけで?、なんの運命のいたずらか、残されたたった2ページだけが、遠い日本の妄想狂の女のところへ流れ着きましたとさ

追記

 しかし、ほんとうのところ図鑑の時代はいつなんでしょうね。もう勝手に妄想が暴走してくっついてしまいましたけど、案外1950~70年代くらいだったりして・・・わははは、知らない。



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by touhen03 | 2012-10-23 06:22 | 骨董市・ガラクタ