P.の小瓶

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 初めてであったのは宮島の干潟でした。四角な陶製の小瓶で、P.というマークがポツンと一つだけついていました。珍しく無傷で出てきたのは、これが何かの容器で、中身が空になったために捨てられたからでしょう。さほど古いものには見えないけれど、今のものでもなさそうでした。手に馴染んで気持ちがよく、何より可愛らしかったので、持ち帰って机のそばに置いたまま忘れていました。

 ところが去年、「骨董屋の非賈品」勝見充男著(晶文社)という本の写真に、万年筆の脇役として、この小瓶が出ていたのです。その写真を見ると、陶製の四角な蓋がついていました。そのうえ、最近頂いた鎌倉の海岸陶片の中に、このP.マーク付の陶片が混じっていました。P.の小瓶って何なのか。万年筆と一緒だったのでインク瓶かもしれないと思い、マークから連想してパイロット社に問い合わせてみましたが、作ってはいないとのことでした。それで晶文社に問い合わせてみました。本のテーマとは直接関係のない、脇役の小物のことなど無理かなと思いましたが、著者の方に問い合わせてくださり、これがインク瓶ではなく、化粧品容器だとわかりました。言われてみれば、確かにインク瓶にしては口が広すぎます。今はない会社のもので、たぶん戦前のものだが、それ以上はわからないとのことでした。

 「新聞広告美術大系」羽島知之著(大空社)という、戦前の新聞広告を集めた本に、医薬・化粧品、明治編、大正編がありますが、その中にP.の小瓶は出てきませんでした。昭和戦前の可能性が高いのかもしれません。そして陶製の化粧品容器というと頭に浮かぶ時代があります。戦時中です。不足する金属の代わりに陶製の代用品がたくさん作られました。それまでガラス製だった化粧品容器も、この時代は陶磁器で作られていることがあります。ただし、P.の小瓶には昭和16年以降の陶磁器製品についているはずの統制番号はありませんから、それより少し前のものだったのかもしれません。このあたりは、想像の域を出ませんけれど・・・4つ目のP.の小瓶が、陶片好きの作家、寮美千子さんによって拾われたようです。P,の小瓶はかつて大量に流通して、そして忘れ去られたのかもしれません。海岸や川、骨董市、家の中など、P.の小瓶が出てきたらぜひ教えてください。
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by touhen03 | 2005-09-01 00:36 | 陶片コレクション