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9月24日の鞆 その4

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 今回持ち帰ったものに、ほとんど完品に近いタイルがあります。これは瀬戸で作られたもので本業敷瓦と呼ばれ、旧家のトイレや風呂場などの床や壁に使われました。瀬戸では新しい技術である磁器のことを新製焼と呼んだのに対し、これまで焼いてきた陶器を本業焼と呼んだため、この陶器質のタイルは本業敷瓦と呼ばれたのです。このような銅版転写で模様をつけた本業敷瓦は明治~大正時代にかけて盛んに作られました。現代の感覚からすると、ずいぶん大きくて重たいタイルです。私が拾ったものを測ってみましたら一辺が24.5cmありました。このように大きなサイズのものは古いタイプだそうです。どうやら明治時代のものらしいです。
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 裏を見てください。分厚くて、きめが粗く、ザラザラの質感です。
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 拡大して見ると銅版転写特有の細かい線の集まりや、模様を転写した時のズレが判ります。
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 中央の模様の部分です。ちょっとレトロな雰囲気の布地を思わせます。瀬戸の本業敷瓦には独特の美しさがあります。陶器に印刷されたためか、銅版転写の鋭い線も、水分の多い柔らかい優しい姿をしています。

 本業敷瓦は宮島でも時たま見ることがありましたが、なにしろ大きくて、塊で出てくると重たいし、生地がザラザラで水分をよく吸うため生物にとって心地よいらしく、フジツボだの、緑色の藻のようなもの、真っ黒いカビのようなもので覆われやすく、後の処理が思いやられて、これまで長い間、拾わないできました。ところが鞆の干潟では、この本業敷瓦の破片が実に多いのです。小さな破片も多く、これくらいなら持って帰っても困らないと拾っているうちになんて美しいのだろうと思うようになってしまいました。鞆には国の重要文化財に指定されている太田家住宅があり、その風呂場や便所にも、この美しいタイルがたっぷりと使われていて、これを見ると一層、本業敷瓦の破片は鞆の一部のように思えてきました。
by touhen03 | 2007-10-04 00:05 |